ラムサール条約第7回締約国会議(1999年、サンホセ、コスタリカ)
参加報告(COP7>JAWAN Ramsar CoP7 参加報告)


*コスタリカ*
コスタリカは中米の自然に恵まれた小国で、面積は九州と四国を合わせたくらい、そこに300万人の人々が住んでいる。軍隊を持たない中立国で中米のスイスと呼ばれることもある。国土の4分の1近くを国立公園や何らかの保護区にしており、それらを維持する費用を捻出するために自然を利用した観光に力を入れている。そのため、エコツーリズムのメッカとしても世界中にその名を知られている。


*1日目(5月10日、月曜日)*
コスタリカの首都サンホセで1999年5月10日月曜日から、ラムサール条約第7回締約国会議が始まった。

<開会式>
 7回目にして初めて途上国で開催される締約国会議であり、国家元首が開会を宣言したのも締約国会議では初めてのことであった。

 コスタリカのロドリゲス大統領は、経済成長と環境保護が対立する概念だとういう考え方はもはや成立しないことを強調し、コスタリカがこれまでに地球温暖化防止、森林、水資源や生物多様性の保全のために様々な努力をしてきたことや、環境対策についても地方分権を進めていることを説明した。
 大統領の他にもラムサール条約事務局長ブラスコ氏、ユネスコ代表、国際自然保護連合事務総長、コスタリカ政府副大統領兼環境エネルギー省大臣の挨拶によって、開会式が彩られた。また、今回初めてラムサール湿地保全賞が授与される運びとなり、2名の個人(ロシアとペルー)と3団体(ケニア、ギリシャ、カナダ)が栄誉ある受賞に輝いた。

<報告>
 1日目の午後からは早速議事が進行されたが、まず、長い間ラムサール条約の法律顧問をやっていたシリル・デ・クレム氏がこの4月に亡くなったことに対して弔意を表し、黙祷が行なわれた。[彼は法律顧問としての立場から、ワシントン条約京都会議(1992年)及びラムサール条約釧路会議(1993年)では同時通訳の総括も行なっていた。]会議全体の議長としてコスタリカ政府の環境エネルギー省女性大臣、そして2名の副議長(デンマークとウガンダ)が選出され、続いて常設委員会議長の報告、科学技術検討委員会、条約事務局長の報告が行なわれた。科学技術検討委員会の議長が欠席のため、委員会報告は日本から参加している自然環境研究センターの菰田博士から読み上げられた。
 締約国会議の直前に行なわれた、国際自然保護連合主催の「世界生物多様性フォーラム」からの報告では、泥炭地の重要性はじめ様々なトピックについての議論が概略され、同じく直前に行なわれた「NGO会議」については、地球の友から昨年12月に名古屋で開催されたNGO集会にも参加してくれたメリッサ・マリンが話合いの中身を説明してくれた。メリッサからは、日本のNGOから報告があった諌早や藤前等の問題についてもきちんと言及がなされた。

[夜]
 この日の夜には、コスタリカ政府主催のパーティが行なわれ、世界各国から参加した人々がお互いを紹介し合ったり、あるいは昔からの知り合いが近況を報告し合っていた。


*2日目(5月11日、火曜日)*
<地域報告1>
 この日からは、まず世界の各地域ごとにおけるラムサール条約の履行状況の報告が行なわれる。前回の締約国会議(ブリスベン、1996年)では6年間を対象にした『ラムサール条約戦略計画1997−2002』が採択されているので、今回は締約国から提出される国別報告書の中身は『戦略計画』の進行状況の報告となっていた。事務局が各地域ごとに国別報告書全体のまとめを行なったのが、この報告である。
 まずは、条約事務局のアフリカ地域担当官がアフリカ地域の報告を行ない、ついで今回の締約国会議を最後に条約事務局を去ることに決まっているティム・ジョーンズ氏(英国出身)が、西ヨーロッパと東ヨーロッパをまとめて報告した。

[昼休み]
 昼休みの時間を利用して、会議場となっているホテルの別の集会室では、国際湿地保全連合(ウェットランド・インターナショナル)による、世界全体のラムサール登録湿地の概況報告書、そして様々な湿地の資源量(総面積)推定の試みについての報告が行なわれた。
 また、別の集会室では、WWFジャパンの主催で干潟を含む潮間帯湿地の保全と賢明な利用の促進(干潟保全決議案)を考える非公式会合が行なわれた。韓国、オランダ、アメリカからの政府代表を含めて60人が参加。韓国からは、この決議の共同提案国となる意思の表明が合った。
 この日、ホテルのロビーの一角を借りてJAWANの制作した20分の日本の湿地紹介ビデオを終日上映し120人以上の人々が参加した。ビデオ鑑賞にはアフリカや、中国の代表が立ち寄り、ぜひビデオをとの依頼され、持参したものはすべてなくなってしまった。

<地域報告2>
 午後の部では、新熱帯区について国際自然保護連合の特別アドバイザーから報告が行なわれ、ついで、条約事務局長補佐から北米地域の報告が行なわれた。
 こうした通常の議事進行の合間合間に、様々な特別報告も行なわれている。2日目のこの日には、世界銀行の環境部長から世界銀行が環境を開発計画のなかに取り込もうと努力している内容が報告され、国際自然保護連合東アフリカ事務所のジェフリー・ハワード博士からは、ホテイアオイや様々な魚類といった「侵入生物」の脅威についての報告が行なわれた。また、コスタリカにおける湿地保全の現状についての報告もこの日に行なわれた。

[夜]
 この日は特別に夜7時から9時迄の間に、ラムサール条約の地域区分や常設委員会の役割を再検討するための本会議が開催されている。極めて政治的な議論がなされたのだが、かいつまんで述べると、アジア地域を関係の深い太平洋地域とひとまとめにするか、現在のようにアジア地域とオセアニア地域の2つで行なっていくかという話であるが、前回の締約国会議以降に加盟したイスラエルをアジアに含めるかどうかが背景となっている。この日は最終的に結論が出ずに、木曜日の午前の部に持ち越すこととなった。
 この会合と並行して、NGOの湿地保護に果たす役割のケーススタディーの非公式会合を行った。ここも50人以上が参加し、日韓の保全活動の実例の紹介を受けて、オーストラリアや、コスタリカの参加者から96年のブリスベン会議以来の関係は世界に広がっていくべきこと。また、諌早の水門を開けるキャンペーンを共同で行いたいとの表明も行なわれた。


*3日目(5月12日、水曜日)*
<地域報告3>

 これからラムサール条約と密接に活動していきたいとする「世界ダム委員会」からの特別講演に続いて、事務局長補佐からオセアニア地域における『戦略計画』履行状況の報告が行なわれた。オーストラリアでは普及啓発活動や環境教育に大きな努力が行なわれているとの報告が行なわれたが、NGOからはオーストラリア国内の登録湿地の状況が前回のブリスベン会議でかなり問題とされたにもかかわらず、改善がされてないという指摘が行なわれた。また、前回の締約国会議がオセアニア値域に焦点を当てるために開催されたにもかかわらず、締約国の数が増えていない、すなわち太平洋諸島の小さな国々がいずれも加盟しないままに留まっているという残念な状況にあることが伝えられた。
 生物多様性条約事務局から、ラムサール条約と生物多様性条約との間の協力関係についての報告が行なわれた後に、ラムサール条約事務局アジア地域担当官のレベッカ・ドクルツ女史によるアジア地域の報告が行なわれた。ブリスベン会議以降に韓国やモンゴルが加盟し、北東アジア地域では北朝鮮を残すのみとなったが、従来からの加盟国による登録湿地の数は遅々として増えていないことが指摘された。
 次いでアジア各国の政府代表やNGOからの発言が行なわれたが、日本政府代表団は、沖縄県の漫湖が新しく登録湿地として指定されたこと、名古屋市の藤前干潟干潟の埋立て計画が回避されたとの報告が行なわれた。さらに日本のNGOとして、日本野鳥の会からは登録湿地であるウトナイ湖に影響を及ぼしかねない千歳川放水路計画もまた、回避される運びになったことが報告され、藤前干潟を守る会からは、藤前干潟が保全されることになったことを歓迎しつつも、日本国内には諌早、和白、曽根、三番瀬等の干潟の問題が山積みであるとの指摘が行なわれた。
 中米地域の湿地の現状報告に続いて、先住民代表から「中米地域の湿地と人々に関する宣言」が発表された。

<活動内容・決議、勧告の討議1>
 午後の部では、次回締約国会議までの条約活動内容とそのための予算案の議論が開始され、さらにいくつかの決議案・勧告案の討議が行なわれた。「泥炭地の管理と賢明な利用」に関する勧告案では、最近再びスタートした東南アジアにおける泥炭地火災への緊急対策が求められた。フィリピン政府が提案した「潮間帯湿地(干潟等)の保全と賢明な利用」に関する決議案では、韓国政府が共同提案国として名乗りをあげ、養殖場の問題に関してエクアドル政府が特にエビの養殖について決議案の中で言及すべきだという修正案を提出した。


*4日目(5月13日、木曜日)*
<地域区分について>

午前中は、火曜日の夜に行なわれた特別本会議、ラムサール条約の下での地域区分について持ち越されていた決議が行なわれた。火曜日夜の段階で結論が容易に出ないことが明らかになっていたため、この日は初めから多数決による採択が予想されていた。ラムサール条約締約会議の歴史の中で投票による多数決決議が行なわれるのは初めてのことだったため、投票のやり方に関する投票さえもが行なわれたが、結局修正案を提案していたイラン政府が提案を引っ込める決断を下したために、最終的な判断を投票にかけることは避けられた。ドイツ政府の提案に基づいて、問題とされていたイスラエルは地理区分としてはアジアに留まるものの、会議等に関しては他地域に参加する可能性を示唆する結論となり、また、シリア政府は満場一致には参加しなかったことを記録にとどめるよう要求し、今後のアジア地域は極めて難しい問題を抱えることとなった。


*4日目(5月13日、木曜日)*
[午後]
この日の午後から15日の土曜日まで、2日半にわたって5つの研究部会が行なわれた。

<第1研究部会:「ラムサール条約と水」>
 インドの環境森林省代表が議長を務めて最初の研究部会が始められた。ここでは主に 「河川系管理に湿地保全と賢明な利用を取り込むための決議案(決議案19)」に関する議論 が行なわれ、関連する次の5つの報告が発表された。
報告1. 水循環における湿地の役割
      西インド諸島大学、動物学教授、ピーター・ベーコン博士による発表
報告2. 河川系管理に湿地保全と賢明な利用を取り込むための決議案(決議案19)
      ウェ ットランド・インターナショナル(インド)、C.トリサル博士
報告3. 湿地と国家水政策の制定
      スペイン環境省、エンリケ・ガルシア博士
報告4. 地球規模の水危機に対するラムサールの役割
      アルゼンチン、ラプラタ大学、ホアン・シュナック博士
報告5. 中国における1998年の洪水後の湿地回復策
      中国水資源省、ティアン・ジュジュン氏

 これらの報告の後に、会議の合間合間に議論を重ねてきた「討議グループ」から、これまでの議論の主要ポイントが報告され、さらにWWFインターナショナル事務局長、クロウド・マーチン博士からWWFが開始した「生きている水」キャンペーンの発表が行なわれた。この後に、参加者達は、アジア・オセアニア、東西ヨーロッパ、南北アメリカ、そしてアフリカの4つのグループに別れて、夜7時迄決議案に関する議論を行なった。

 
*5日目(5月14日、金曜日)*
[午前]
<第2研究部会:「湿地保全と賢明な利用の国家計画策定」>

 フランスのマリー・オディール・ゴート氏が議長として、国家としての統制の枠組みを見直し、技術的な指針を利用すること、法と行政指導によって湿地の更なる破壊をくいとめ、再生を促すべきこと、また、更なる重要湿地の指定を求めた。

報告1. 国際的に重要な湿地を識別するためのより体系的な取り組み(決議案11)
     サラ・ディオフ(セネガル) アフリカ代表常設委員
討議グループ報告(戦略的枠組みと指針) カルスト等地下水系の湿地識別について
     デイビッド・ストラウド UK自然保全合同委員会
報告2. 国家湿地政策(NWR)の策定と実施のための指針(決議案6)
     クレイトン・ルベック カナダ野生生物局
報告3. 湿地保全と賢明な利用促進のための法と体制の検討(決議案7)
     クレア・シャイン IUCN国際法センター
報告4. 湿地保全と賢明な利用の国家計画構成要素としての湿地復元(決議案17)
     ハンス・スコッテ・モラー デンマーク国立森林自然局
討議グループ報告(国家湿地政策)
     アナダ・ティエガ アフリカ地域コーディネーター
 この後、各地域ごとの議論が行なわれた。

[昼休み]
<ガン・カモ類東アジアフライウェイネットワーク発足式 / >

 環境庁と国際湿地保全連合アジア太平洋地域が主催した。前回ブリスベンCoP6で発足したシギ・チドリ類、97年のツル類に続く鳥種別フライウェイのネットワークの最後にあたる。その他の生物をもとにしたネットワークについてはかなり先になるだろう。
120脚用意された座席をはるかに上回って、200人近くが参加し、アジア、特に日本からの関心と期待の高さがうかがえる。フライウェイオフィサーは、日本雁を守る会の宮林泰彦氏。
 各地の紹介の中でも、蕪栗沼のNGOと行政が一体となった生息地保全の取り組みは注目に値する。

[午後]
<第3研究部会:「湿地保全と賢明な利用におけるすべてのレベルの人々の参加」>

 米国自然保護条約サポート財団のラリー・メイソン氏が議長となり、IUCN、WWF、米国のカドー湖研究所、釧路国際ウェットランドセンターの協力によりこれまで行なわれてきたプロジェクトについての説明が行なわれた。これに関連して3つの決議案が発表された。

報告1. 地域社会と先住民による湿地管理参加過程を確立するための指針(決議案8)
      ペルー湿地プログラムのヴィクター・ペルード氏
 この後に4月にチャパスで行なわれた「先住民アメリカ地域会議」から、先住民代表のエステル・カマック女史を通じて勧告が読み上げられ、会場は大きな拍手に包まれた。
報告2. 教育と理解を通じた参加型の湿地および河川系管理(決議案9)
      ハンガリー環境省ルイス・ラコス女史
報告3. 賢明な利用の原則適用を促す奨励策(決議案15)
      ニュージーランド自然保護局クリス・リッチモンド氏

 この後、いつものように「討議グループ」による主要ポイントの報告に続いて、各地域ごとの議論が行なわれた。


*第6日目(5月15日、土曜日)*
[午前]
<第4研究部会:「湿地の価値を認識し評価するための手段」>

 議長を務めるスロベニアのゴルダナ・ベルトラム氏が政策や工事計画による湿地の破壊を進ませないため、より広い影響評価が必要であり、現在の環境影響評価の枠を出て社会経済的な影響を含ませることが必要であると述べて、研究部会の報告に入った。

報告1. ラムサール条約と影響評価
     IUCN経済サービスユニット、アンドレア・バグリ氏
報告2. 湿地リスク評価の枠組み
     管理科学者環境研究所のマックス・フィンレイスン氏
報告3. 世界的な湿地資源の検討及び湿地目録の優先事項(決議20)
     世界湿地保全連合のニック・ダビッドソン氏
報告4. 現地レベルにおける湿地保全のための利用しやすいGISの適用
     生物多様性保全専門家のスザンヌ・パルミンテリ氏

[昼休み]
<GISについて>
<漫湖登録認証式 / レセプション>

 日本の11番目のラムサール登録地となる沖縄県那覇市漫湖の登録認証状が、事務局長ブラスコ氏から授与された。

[午後]
<第5研究部会:「湿地に関する地域的国際的協力のための枠組み」>
 ガーナ土地森林省の副大臣、ナヨン・ビリジョ氏が議長となり、国際条約としての一番の役割である国際協力についての研究部会が最後に行なわれた。
報告1. 多国間にわたる湿地と世界の河川流域
      英国ケンブリッジ「世界自然保護モニタリングセンター」のジャヴィエ・
ベルトラン氏
報告2. 河川流域委員会を通じた国際協力
      「河川流域組織国際ネットワーク」のモウリーン・バレステロ女史
報告3. オカバンゴ流域保全のための国際協力
      ボツワナ自然保護戦略庁、スティビー・モナ氏
報告4. 条約における国際協力のための指針 Part I.
      多国間にわたる湿地、河川流域、生物種
ラムサール条約常設委員会のアジア地域代表である、マレーシア政府代表チェー・コン・ワイ氏が決議案20を紹介した。
報告5. 条約における国際協力のための指針 Part II.
      条約実施のための二国間および多国間援助機関による財政支援の促進決議案20の中で、特に援助機関に関する部分に関しては、「地球環境センター」のファイザル・パリッシュ氏が報告を行なった。
 引き続いて、「討議グループ」の報告、地域ごとに別れての検討が行なわれて、月曜日から土曜日までの長い会議が一段落した。

 日曜日には公式の会議行事は行なわれず、参加者たちはそれぞれツアー会社に予約をした差様々な日帰り旅行を楽しんだ。この日は事務局スタッフにとっては極めて重要な1日であり、この1週間に出された様々な意見に基づいて会議書類を改訂し、それを英語・フランス語・スペイン語の公式言語3つでそろえて、月曜日の朝までに印刷を終了させなければならないことになっている。

*第8日目(5月17日、月曜日)*
 いよいよ会議も2日を残すだけとなった。疲労困憊を隠せない条約事務局の職員もお互いに「あと2日!」と声を掛けて励まし合っている。日曜日に様々なツアーが行なわれたため、それまで知らなかった参加者どうしも顔見知りになり、ずいぶんとなごやかな雰囲気のうちに、通常の議事が再開された。

<決議案・勧告案の採択 1>
 先週木曜日の議決で、ラムサール条約の下での地域区分の問題が一応の決着をみたため(決議案1:地域区分)、この日は決議案2から討議が始められた。決議案2は今後3年間の「科学技術検討委員会」のメンバー決定とその業務遂行方法についてである。アジア地域からはフィリピンとヨルダンの研究者が選出されている。
 引き続いて、今後3年間の条約業務計画と予算の話が行なわれた。各国の財政事情が厳しい中、熱心な討議が行なわれたが、途上国の拠出金の最低限度額が1000スイスフラン(約700米ドル)に固定することに合意が得られたものの、午前中には全体予算の増額幅を決定することはできなかった。

[昼休み]
 昼休みの間に、予算について話し合う検討グループの緊急会議が行なわれたが、この他に、臨時のアジア地域会合も行なわれた。これはアジア地域からの次回常設委員会のメンバー2ヵ国を選出するための話し合いの場である。立候補したインドが常設委員会メンバーとなることに決まったのに加えて、韓国からの推薦を、モンゴル、タイ、フィリピン等が支持して、日本も今後3年間、常設委員会のメンバーとして参加することが決定された。

[午後]
 午後の会議再開とともに、昼間の緊急会議による予算案についての妥協案の報告がされた。おおむね常設委員会の案を踏襲することが合意されたものの、細かい変更が加わったため、改訂案を改めて準備して明朝最終決議を採択する運びとなった。
 この後、決議案3から決議案14までが議事にかけられ、いくつか変更のあるものから、まったく変更なしに採択されるものまで、次から次へと採択された。


*第9日最終日(5月18日、火曜日)*
[午前]

副議長に選ばれたウガンダ代表が最終日の午前中の議長を務める。まずUNEP代表によって声明が読み上げられた。そして決議案15(湿地復元)から討議が再開された。
 決議案20(国際協力指針)の採択になって、微妙な問題が持ち上がった。いくつかの国にまたがる河川流域の管理に関して、特に水資源について外交問題を引き起こしかねないと懸念が表明された。さらに、これは決議ではなくて勧告にしておくべきだとの南米諸国からの提案に続いて、決議と勧告の違いについての議論が起こった。また、エジプト代表が今回提出された文書のうちいくつかがあまりにも分量が多いため、次回からは説明的な文章に関しては資料として、決議等に含めないで提供されるべきだと提案した。
 次の決議案21(目録の優先事項)では、バードライフ・インターナショナルが次回締約国会議を招聘したいと表明しているスペインのドニャーナ国立公園(ラムサール登録湿地)の問題を訴えた。これに対してスペイン政府代表は、問題を十分認識しており、ドニャーナ国立公園は以前としてモントルーレコードにとどまることを表明した。
 潮間帯湿地の保全に関する決議案22では、韓国政府とエクアドル政府がエビ養殖の問題を明記するかどうかについて意見を交わした。勧告案25はアジア太平洋地域の渡りを行なう水鳥保全のための多国間協力に関するもので、米国政府も日米渡り鳥条約に基づいて積極的に協力をしていきたいと表明した。
 会議前に提案されていた2つの文書を統合して新たに提案された決議26は、登録湿地の境界の定義と湿地生息地の代償措置についてであった。提案したのはオーストラリア政府等で、代表して説明を行なったオーストラリア政府は、初期の登録湿地の境界内に空港が含まれていたためにこの問題が生じていることを訴えた。しかし、この提案は意味を拡大解釈すれば悪用される恐れがあるとして、WWF、バードライフインターナショナルが反対し、韓国湿地連盟がオーストラリア北部のカカドゥ国立公園の問題を取り上げた。世界遺産センターの代表がカカドゥの問題はこの夏の世界遺産条約特別会議で取り上げることを伝えた。こうして、一筋縄では解決できない様子となり、昼休み中に関係者が集まって協議することとなった。さらにいくつかの提案が採択され、午前中の議事を終了した。

[午後]
 昼休み中の協議で決議26は大幅に文章を改変あるいは削除することなり、問題は一応の解決をみた。次に懸案となっていた予算案についての決議案協議が再開されて、最終日に提出された案は若干の修正とともに採択された。次に主催国コスタリカ政府とコスタリカの人々に感謝を表明する決議が拍手をもって受け入れられた。
 提案36、ユーゴスラビアの扱いに関する決議案で、締約国会議は議論の最終的山場を迎えた。インドや中国、ロシア等いくつかの国々が採択に参加せずに棄権すると表明したものの、最終的に決議案は採択された。

<時期常設委員会メンバー選出>
 一連の議題審議を終えた後は、次期常設委員会のメンバー選出だ。アジア地域からは昨日決定されたインドと日本、アフリカからはトーゴ、アルジェリア、ウガンダ、北米からはメキシコ、新熱帯区からはアルゼンチン、トリニダード・トバゴ、オセアニアからはオーストラリア、そしてヨーロッパからはフランス、ノルウェー、スロバキア、アルメニアが選出された。特にヨーロッパでは、今回の締約国会議が始まるまでは東西ヨーロッパの2つの地域に分かれていたのが、ひとつにまとまったことが特筆に値するだろう。

<次期締約国会議開催国>
 最後の議題は次期締約国の開催国と開催時期だが、特に強力な競争相手がいないことから、会議冒頭で意思表示されていたように、21世紀最初の締約国会議は2002年にスペインで開催されることが決定された。開催場所には3ヶ所ほど候補があるが、今後の決定を待つものとなる。

<各代表メッセージ>
 閉会を前に、国際NGOや各地域の代表からメッセージが述べられたが、全世界の国内NGOを代表して、JAWANの伊藤よしのがNGOの協議によって作成されたメッセージが読み上げられた。

<閉会>
 こうして9日間にわたる長い会議は午後5時半、閉会が宣言された。この日の夜には会議が行なわれた場所でさよならパーティが開催され、次の3年間に向けての協議がもうすでに始められている。

                                                       
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