2017年10月23日、『環境地理学』補講として本学卒業生玉井友里さん(東大大学院へ進学後、東京で就職)による
「チェルノブイリ原発事故の背景と現状」に参加した学生の皆さん、意見感想・質問ありがとうございました。
 以下は質問に対しての玉井さんからの返事です。参考にして下さい。

Qツアーに行く前に自分が汚染されるかも知れないという心配は無かったのでしょうか。

A 下調べして安全ということが分かっていたのであまり不安はなかったです。
 通常より少し放射線量が多いだけで即健康に影響が出るわけではないことも理解していたので。


Q 実際に行って見て、想像と一番違っていたのはどんなことだったのでしょうか。

A たった一人で自給自足で生活していた人の家周辺を見て、この環境で一人で生活できていたことが驚きでした。
 森の中で近くに人里はないし、雪も積もります。


Q複数のツアー会社があったとのことでしたが、選んだ基準とかはあったのでしょうか?

A 検索してみて、情報やツアーの日程数が充実してたのでここに決めました。内容はどこも変わりないと思います。

 https://chernobyl-tour.com/english/


Q ツアーは何人ぐらいのグループだったのでしょうか?日本人も他にいましたか?

A一つのバスで20人くらい乗っていたと思います。ツアーでは一人だけヨーロッパ在住の日本人がいました。
 チェルノブイリ博物館の来訪者のノートにも、日本人の書き込みが複数ありました。

 同じように原発事故の被害に合ったことから、日本人の関心は高いと思います。


Q 全部でいくらくらいかかりましたか?

A 飛行機と宿泊代だけで10万円弱です。意外にも安く行ける国です。


Q ウクライナの人たちはチェルノブイリについてどう思っているのかとかって聞く機会はありましたか?

A 私達と同世代の人の間では、歴史の中で起こった事故という認識のようです。
 普段の生活で意識することはあまりないと思います。


Q TVで人間がいなくなることによって、野生の動植物が増えたというのを聞いた記憶があるのですが、そういった話は出なかったでしょうか?

A ツアーでは森に野生動物も多いと聞いていましたが、出会うことはなかったです。


Q 事故現場でも今はふつうに人が生活しているみたいでしたが、周辺地域には人が住めない地域もあるみたいで、汚染の度合いと事故現場からの距離って相関していないのでしょうか?

A 事故現場で働く人については、被ばく量が一定を超えないために滞在時間が管理されていて、住んでいるわけではありません。
 汚染度合いは現場から放射状に広がるわけではなく、風向きなどで飛び地のように濃いエリアがあります。
 福島原発事故でもそうでしたね。


Q地面に私物を置くと汚染されることがあるとのことでしたが、靴は汚染されないのでしょうか?

A あまり気にしていませんでしたが、訪れたときは冬だったので、雪が汚染された土を覆うため比較的安全でした。
 他の時期に訪れた場合靴についても注意が必要だと思います。


Q 福島の原発もそのうち観光ツアーが出来ると思いますか?

A 何年後になるかは分かりませんが、いずれ出来ると思いますし、ツアー自体には賛成です。
 事故を風化させないことに繋がりますし、ツアー客が落とすお金を復興に充てるなどできると思います。


Q自給自足で生活していたロザリナさんは放射能の影響は受けなかったのでしょうか?

A急性放射線症候群になるレベルの被ばく量でなければ、影響は必ず出るわけではないので汚染地域で健康に生活している人も大勢います。
 ただ、長い目で見ると癌の発症率が上がるなどの影響がありますが、個人差があり一概には言えません。


Q ツアーに参加した人たちはどういう人たちだったのでしょうか?

 大部分外国人、地元の人とかも含まれていたのでしょうか。

A 英語のツアーだったので同じバスに乗っていたのは全員外国人でした。
 ただロシア語のツアーもあり、地元から参加する人も大勢います。


Q チェルノブイリに興味を持ったきっかけは?

A 皆さんと同じように小林先生の授業の中で、人間が引き起こした最悪の環境破壊の一つとして知りました。
 人間活動が環境に及ぼす影響の度合いを実際に見たくて、行くことを決めました。

 他の環境破壊現場もいずれ訪れようと思っています。


Q 部屋の床一面にガスマスクのおいてある部屋のことをTVで見ました。ご覧になりましたか?

A 写真に撮っていませんでしたが、見ました。
 しかし、事故後に何らかの理由で集められたもので、事故とは直接関係ないと聞きました。


Q 黒えん火災とはどのようなものか?

A 原子炉の炉心構造材である黒鉛で起きる火災が、graphite fire呼ばれています。
 通常の火災と違い、大量の放射性物質を拡散する原発事故特有の火災だそうです。


Q 大学院に行って勉強しようと思ったきっかけは?(複数の学生からの質問)

A 環境保全についての関心は元々高かったです。
 環境学についてもっと専門的な内容を学んで、環境保護に役立てたいと思ったからです。

 特に海洋生物の保護に興味があったので、それに直結するような研究(絶滅危惧種であるスナメリの行動生態)をしました。