佐潟
 新潟市の日本海からほど近い砂丘列間に佐潟はある。条約湿地として指定された地域は水域43.6haを含む76ha。

1. 概要

 1996年に国内10番目のラムサール条約登録湿地として指定された。標高は約5mで、指定当時は一部私有地も含まれていたが、現在はすべて公有地となっている。佐渡弥彦地域が1950年に指定され、1981年、米山海岸が追加された佐渡弥彦米山国定公園(29,464ha)の国定公園特別地域となり、同年には一部が国指定佐潟鳥獣保護区となった。さらに登録面積の76haが都市公園法による土地利用制限を加えた佐潟公園(新潟市都市公園条例)となっている。
 1998年、水鳥保護および湿地保全のために環境庁(現環境省)が『佐潟水鳥・湿地センター』を設置、管理運営は新潟市が行っている。

2. 主要な生態系タイプと生物相の特徴
 佐潟は流入河川のない国内最大級の砂丘湖である。水源として雨水や湧き水(淡水)で涵養されている。佐潟の水深は平均1m程度と浅く、窒累やリンなどが多いため富栄養湖とされる。
 野鳥207種・植物634種(文献調査含む)が確認されでいるが、とくに3,000羽を超えるバクチョウやガンカモ類の越冬地として知られている。冬はマガモやコガモ、夏はオオヨシキリなどが優占種である。また内水面漁業権が設定されており、冬場にはコイ・フナ漁が行われ、ウナギも漁獲される。植物では水面にハスやヒシが夏に繁茂し、オニバス(葉の直径が1mにも及び、日本に自生する一年草としては最大、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類)も生育しているが、沈水植物の減少など食性の変化がみられる。

3. 保護管理の現状
 かつては米どころ新潟、佐潟周辺水田への重要な水源地として利用されていたが、現在では佐潟にその役割はなくなった。しかし、水質保全のための管理水位が設定され、水位管理は重要視されている。
 潟岸はヨシが繁茂しており、かつては民有地であり稲作が行われていた。夏季には水位を下げて住民総出の潟普請(がたぶしん)とよばれる大清掃が行われていた。これは湧水や水路維持のほか、湖底の泥や土砂などを清掃除去する作業であった。これは結果的に水循環の健全化をもたらすとともに、とくに水面下での多様な生態系を維持する役割も担ってきたと考えられる。また、春季は湖底の植物遺骸やや泥を水田に挙げて有機肥料として活用する作業も行われていた。これは循環型農業であり、ラムサール登録前から地域住民により保全と賢明な活用(ワイズユース)が実践されていたといえる。これらの活動はその後なくなり、かつての潟岸の水田はヨシ原に変化、さらに遷移が進行している。また湖底で泥も堆積したままであり、水の透明度も明らかに違ってきている。
 周辺部においてはゴミ投棄の問題があるが、地域住民が主体となったクリーンアップ活動・現代版「潟普請」が行われている。地元の小中学生も積極的に参加し、地域による保全とワイズユースが進められている。2000年には市民・NGO・現場担当者による『新潟県水鳥湖沼ネットワーク』が組織され、佐潟以外の湖沼とも野鳥や植物の情報交流が実施されている。また、新潟市による研究奨励制度も設立されており、佐潟に関するさまざまな研究が実施・報告されている。

4. 保護管理と制度の問題

 新潟市は2000年「佐潟周辺自然環境保全計画」を策定し、2005年には検討会議が今後の対策について報告書をまとめた。報告書は近年のアオコ発生などの水質悪化を指摘しており、報告書の内容を受け、保全計画は2006年3月に改訂された。そこでは「先人の知恵に学び、現代の社会情勢にあった賢明な利用を目指し、地域住民が関与・共存する湿地管理を推進する」という方向性が新しくうたわれている。具体的方策については、2006年に協議会が組織され、計画の進行管理を行っている。

5. 参考
   1) ラムサール条約登録湿地:佐潟ホームページ
     https://www.city.niigata.lg.jp/kurashi/kankyo/hozen/shizenfureai/wetland_city.html
   2)佐潟と歩む赤塚の会 - ホーム | Facebook
     https://www.facebook.com/sakatatoayumu.0/