漫湖
1999年4月に国内11番目の登録湿地として指定された。マングローブ林を含む湿地としては国内初。那覇市を流れる国場川と豊見城市を流れる饒波川(のはがわ)の合流点に広がる。
1. 概要
国指定烏獣保護区(250ha)が1977年に設定され、そのうちの特別保護区58haが登録湿地となった。谷津干潟(千葉県習志野市、1993年登録湿地に指定)とともに、周辺を住宅や道路に囲まれたなかにあるが、潮の干満の影響により干潟が露出する。両岸には公園が整備されており、テニスコートなどのスポーツ施設などもあるが、環境省により『漫湖水鳥・湿地センター」が2003年に開設されている。
2. 主要な生態系タイプと生物相の特徴
湖という名称がついているが、基本的にはマングローブ林やヨシ原を含んだ河口干潟である。河口部からは3kmほど上流になるが、干潮時には最大50haほどの干潟が露出する。南岸には河川から土砂が流れ込み水深が浅くなり、マングローブの生育に適した干潟が広がる。饒波川の河口域には高さ2~3mのメヒルギ林が広がり、ほかにはオヒルギやヤエヤマヒルギが構成樹種となる。マングロ一ブ林は約11haあり、漫湖のマングロ一ブは沖縄県内でも有数の生育地となっている。マングローブの背後には小規模のヨシ原があり、全体として複雑な生態系を形成している。沖縄県内で確認されている野鳥約380種のうち148種までが漫湖周辺で確認されている。干潟にはゴカイ類・貝類・オサガニ類などが生育し、渡り鳥の格好の餌となる。シギ・チドリ類の重要渡来地であり、春秋の渡りおよび越冬期の種数と個体数が比較的多い。ムナグロ、メダイチドリ、ダイシャクシギ、キアシシギ、ハマシギの飛来数も多く記録されている。世界的な絶滅危惧種クロツラヘラサギ(ⅠA類)やズグロカモメ(Ⅱ類)なども飛来する。2000年の調査では、甲殻類ヒメアシハラガニモドキ周辺から発見され日本初記録となった。底生動物でも絶滅危惧種が数多く記録され、モモイロサギガイでは国内最大の生息地となっている。
3. 保護管理の現状
沖縄野鳥の会の調べでは、ムナグロは1970、1980年代の20分の1に減少、2,000羽前後飛来していたハマシギも300羽程度となり、カモ類も年間数羽にまで減少した。原因として、土砂の流入とマングローブ林の拡大による干潟の減少、水質や底質の変化のほか、漫湖大橋の開通による騒音の増大などが考えられている。一方、地域の取り組みとして、国場川水系7市町村によって、清掃活動、野鳥観察、展示や環境ラリーなどが行われてきた。また沖縄県と那覇市の協働による清掃活動、企業等による清掃活動も行われている。『漫湖自然環境保全連絡協議会』では、清掃活動(年2回)や教職員・一般参加者向けの漫湖総合学習も行われてる。また、那覇市と協議会による鳥類、底生動物、底質のモニタリング調査が実施されている。
4. 保護管理と制度の問題
マングローブはもともと漫湖には少なく、1977年以前には0.5ha以下であった。緑化や水質浄化等を目的として1990年代に1ha弱の植林が行われ、1993年完成のとよみ大橋橋脚が川の流れを変えたことも影響してヒルギが増加、2003年には8ha以上を占めるようになった。マングローブの拡大がさらに土砂の流れを阻み、マングローブが広がりやすくなる悪循環を生んでいると指摘されている。こうした現状を受けて『自然再生推進計画検討委員会』が組織され、2005年には「漫湖地区自然再生全体構想案」が沖縄県によって策定されている。このなかには、繁茂しすぎと結論づけられたマングローブ伐採や新たな水路の設置計画などが盛り込まれている。
しかし、いちばんの問題点は沖縄本島最大級の干潟である泡瀬干潟や佐敷干潟などの他の干潟で保全が後回しにされている沖縄の現状だろう。
5. 参考
1)漫湖水鳥・湿地センターホームページ
https://www.manko-mizudori.net/
2) 漫湖自然環境保全連絡協議会ブログ
http://hozenkyo.blogspot.com/