§4. 地球環境問題と国際条約
PartT. オゾン層の破壊
Key words: オゾンホール ← フロン(CFC)
ウィーン条約
モントリオール議定書
★オゾン層の役割
太陽光線に含まれる有害な紫外線(UV-B)を吸収
⇒生物を保護するフィルターの役割
実際に地表に届く紫外線の量を約半分に
★フロン=クロロフルオロカーボン(CFC)炭素、塩素、フッ素の化合物
1926年開発 毒性がなく無臭、
安定〜他の物質と反応しにくい
⇒ ・エアコンの冷媒
・スプレーの充填ガス、
・プラスチックの発泡形成ガス
・半導体などの洗浄溶液として、
大量に使用
1974年、米のモリナとローランド
最初にフロンガスによるオゾン層破壊の危険性報告。
しかしこの段階では、オゾン層破壊のスピードは
それほど速くはなく、数十年から100年かけて、徐々にオゾン濃度が低下していく程度のものだと考えられていた。
ところが南極のオゾンホール発見以後、全地球規模での急速なオゾン濃度の減少が
1980年代以後起きていることがわかってきた。
1979年 310ドプソン単位 1986年 290ドプソン単位(6%濃度減少)
※ドプソン単位:観測されたオゾン全量が1気圧、0℃におかれたときに持つであろう オゾン層の厚みを示す。 300ドプソン単位→0.3p
南極付近 200ドプソン単位を下回る領域も出現
1987年にはそれ(200ドプソン単位以下の領域)が南極大陸を覆うほどにも
拡大 150ドプソン単位を切る領域も(観測史上最大のオゾンホール出現)
「オゾン層の保護に関するウィーン条約」
1985年 採択
1987年 モントリオール議定書
先進国:特定フロン等 1996年までに全廃
途上国: 同上 2015年まで
先進国:代替フロン 2020年までに全廃
途上国: 同上 原則2030年まで
1988年 日本が加盟
◇高度40q(オゾンの生まれる高度)における減少量が、45%に達するのに約100年
オゾンの量が1%減少すると、有害な紫外線が2%以上増加
↓
オゾン50%減少 ⇒ 太陽からの有害な紫外線がすべて地表に届く
∴100年程でオゾン層はボロボロの状態となり、
有害な紫外線に対する遮蔽機能が失われる。
オゾン層のオゾンが5%減少
⇒ 全世界で皮膚ガンになる人が24万人増加(予想)
+
目の損傷(特に白内障、角膜炎)の増加
免疫機能低下によって起こる感染症の増加、症状の進行
遺伝子異常
計画的な予防接種の効果の減少 etc
植物の光合成に対する影響
→ 光合成が抑えられて成長阻害、発育不良を起こす。
eg. 大豆はオゾンが25%減少すると収穫量が25%減少する
フロンガスがオゾン層にある成層圏に到達するのに約10年かかる
⇒ 今オゾン層を破壊しているフロンは10年以上前に使われて放出されたもの
∴フロンのオゾン層への影響は、21世紀に入ってピークを迎え、自分達の孫やそれ以後の世代が地球の気候変動に見舞われ、食糧危機に瀕し、皮膚ガンの増加に苦しむことになる。
PartU. 地球温暖化と気候変動枠組み条約
★温暖化ガスの寄与率、増加率
寄与率 濃度
増加率
二酸化炭素 55% 350ppm 0.5%/year
フロン類 24% 500ppt
4.0%/year
メタン 15% 1.72ppm
0.9%/year
亜酸化窒素 6% 310ppb 0.8%/year
PPM (parts per million)
百万分率:微量の物質の含有量を示す単位
一般に気体の場合は体積比、その他の場合は重量比
CO2: 2ppm =1m3 の大気中 2 ml
●水質汚濁では mg/kg と mg/l を同一と見なしてmg/l
を ppm で表すことがある。
排水中 銅 3ppm=排水 1kg 中に銅 3
mg
地球温暖化の影響は?
1. 気候が不安定に
台風の巨大化、頻繁化や温暖の差が極端になる恐れ
→保険会社が温暖化に多大な関心
2. 植物への影響
→砂漠化の進行
北海道はどうなるか?
1. 釧路湿原
2. 昆虫類
3. エゾシカ
4. 高山植物
5. ヒグマ
6. 河川に生息する魚類
7. 道東の漁業資源が壊滅?
8. 人口増加と開発圧の増加
PartV. 砂漠化
すでにある砂漠の拡大とは全く別の問題
大規模の伐採⇒洪水
⇒表土流出⇒砂漠化進行
開墾⇒わずかな期間の耕作
⇒土地が痩せる
砂漠化の進行→世界で耕作可能地の約2割で作物を耕作しにくい状況に
●生態系の消失
砂漠化
耕地の減少
生物多様性の喪失
→10億人に影響
途上国の貧困が加速
↓
人口移動(⇒環境難民)
世界の砂漠化
アフリカ:大陸の2/3 砂漠か乾燥地
アジア:砂漠化が進行している土地面積
がどの大陸よりも広い
(→14億ha=日本の国土面積の約37倍)
ラテンアメリカ:乾燥地の約2/3が影響を受けている
国連砂漠化対処条約
1994年 採択
日本 1998年12月条約発効
PartW. 国際環境条約
Green Issue と Brown Issue
(1) バーゼル条約
1976年7月 北イタリア、セベソ
農薬工場の爆発事故→ダイオキシン
1982年9月 2.5t のドラム缶行方不明
→イタリア・スイス・フランスの大捜査網
1983年 北フランスの小村で発見
1988年 ナイジェリア←イタリアからPCB等有害廃棄物
「カリンB号」
バーゼル条約
「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」
1989年 スイスのBaselで採択
日本は1992年 にバーゼル法を制定し、1993年に加盟。
★NIMBY
Not In My Back Yard
→ゴミ処理場等の迷惑施設拒否
(2) ロンドン・ダンピング条約
1977年 日本政府
「低レベル」放射性廃棄物
ドラム缶1万本を1981年に日本海溝6000mの深海に「試験投棄」すると発表
←太平洋諸国の猛反対
専門家を派遣し「安全性」強調
1983年 ロンドン条約COPの決議 →事実上不可能に
ロンドン・ダンピング条約
1972年「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」
日本は1980年に加盟
(3) 水俣条約(「水銀に関する水俣条約」)
2013年1月にジュネーブ(スイス)で開催された政府間会合において、国際的な水銀条約に関する条文案が合意され、条約の名称が「水銀に関する水俣条約」に決定された。
同年10月、熊本市及び水俣市で水銀に関する水俣条約の準備会合・外交会議が開催され、約140か国・地域の政府関係者、国際機関、NGO等、1000人以上が出席し、水銀に関する水俣条約が全会一致で採択された。92ヶ国(EU含む)が条約に署名。条約は2017年8月16日に発効。
2020年以降、水俣条約が定める水銀使用製品の製造などが禁止となるが、我国は先駆けて、一部製品について廃止期限を2017年に前倒しした。
例えば、蛍光ランプは、水俣条約では2020年が期限だが、国内法では2017年末に前倒しされた。産業界(事業者及び業界団体)にヒアリング調査を実施し、国内製造・市場流通の実態、水銀フリー代替品の有無や今後の代替可能性、適用除外の必要性等について聴取して決定したとしている。
電池も2017年末に水銀使用製品が禁止されるが、すでに国内では概ね対応が済んでいるものの周知期間を考慮して決めたとしている。
(4) 生物多様性条約
1992年 採択→「地球サミット」で署名(157ヶ国)
利害対立:
・生物資源を持つ途上国
・利益を得ている先進諸国
生物資源から得られる利益の公平な分配が
うたわれたことから、米は署名を拒否
(1993年6月4日に署名したものの)未加盟
名古屋議定書 →ABS(アクセスと利益配分)
愛知ターゲット (生物多様性条約COP10、2010年名古屋)
「ターゲット1」:CEPA(広報普及教育活動)
「ターゲット2」:生物多様性の価値の認識
「ターゲット4」:持続的な生産及び消費
「ターゲット6」:魚類、無脊椎動物、水生植物の管理と持続的収穫
「ターゲット7」:農業、養殖業、林業の土地を持続的に管理
「ターゲット10」:サンゴ礁等の保全
「ターゲット11」:陸上及び内陸水域の17%以上、沿岸海洋域の10%を保護区に
「ターゲット14」:→ミレニアム開発目標(貧困削減など)
「ターゲット15」: 劣化した生態系の15%以上の再生保全
外務省 1991-2003
1) 気候変動 159万ドル
2) 生物多様性 164万ドル
地球環境ファシリティ (GEF)
GEF-1(94-98) 米 4.3億ドル
日 4.15億ドル
GEF-2 (98-02) 米 4.3億ドル
日 4.13億ドル
GEF-3 (02-06) 米 5.1億ドル
日 4.23億ドル
GEF-4 (06-10) 米 3.2億ドル
日 3.1億ドル
(5) 世界遺産条約 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」
1972年 ユネスコで採択、日本は1992年 に加盟。
世界遺産基金
→保護対象となっている遺産を守る
代表的な世界遺産
オーストラリア グレートバリアリーフ、エジプト ピラミッド、カンボジア アンコール・ワット、ギリシャ アクロポリス、ハンガリー ブダペスト、インド タジ・マハール、イタリア レオナルド・ダ・ビンチの最後の晩餐とサンタ・マリア大聖堂、タンザニア セレンゲティ国立公園、アメリカ合衆国 イエローストーン国立公園
日本: 白神山地、屋久島、知床、小笠原
(6) ワシントン条約(CITES)
Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora
1973年採択 日本:1980年加盟
希少な野生生物が捕獲・売買で絶滅しないよう、 その商取引を規制
規制の対象: 個体、剥製や牙、毛皮、象牙細工、毛皮のコート、ワニ皮ハンドバック等、
1000品目以上の取引規制。
日本は一部留保。 条約違反の輸入も多く批判されてきた。
付属書T:絶滅危惧種=商業目的 の取引禁止
付属書U:取引を規制しなければ絶滅のおそれ
輸出入には輸出国の輸出許可等が必要
付属書V:締約国が自国において規制を行う必要があると認めたもの
原産地証明書や輸出許可書が必要
付属書T掲載動物の例:
オランウータン(ペット)、ゾウ(象牙)、トラ(漢方薬、毛皮)、サイ(角)、ツキノワグマ(胆のう)、クジラ(食用)、コンゴウインコ(ペット)、タイマイを含む全てのウミガメ(べっ甲製品、剥製)、ワニ類多数(革製品)、オオサンショウウオ(ペット)、チョウザメ類多数(キャビアを食用)、アジアアロワナ(ペット)、サボテン類多数(観賞用)、ラン類多数(観賞用)、アロエ類多数(観賞用)etc.
日本は、「野生生物消費大国」
日本がCITESで必要とされる許可証を得て合法的に輸入を行っている件数は年間35,000件。
→ 世界第2位
国民一人当たりの輸入件数では世界第1位
日本は生きた鳥(主にペット用)では国際取引の42.5%、爬虫類の皮のハンドバッグでは52.5%、サンゴでは42.2%を占め世界1位
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