§2. 日本の湿地保全

PartT. 日本の湿地の現状 (環境庁[現環境省]調査)
@ 湖沼(1991年)
 水面面積1ha以上の湖沼
   自然湖岸は56.6%  非改変湖沼は44% (しかし9割以上が湖岸総延長5q未満)
A 海岸(1993年度)
  自然海岸は55.2% 島嶼域を除くと45%のみ
B 河川(1985年調査)
  1級河川 113  ダムや堰などの河川横断工作物なしが3河川のみ 釧路川/網走川/浦内川
C 干潟
  1945年〜1978年までの33年間で日本の干潟の33%が失われた
  1978年〜1992年までの14年間でさらに全体の7.3%が消失  

PartU. 日本の干潟保全
[1] 諫早湾干拓計画
1952年 「有明海広域開発計画」・・・・・・・@ 
  長崎・佐賀・福岡・熊本 4県による40,000haを埋め立て予定 →農業用地+湾底の石炭採掘
   →中止: 米の余剰生産、ノリや他の海産物の養殖の進歩、石炭から石油への転換

「長崎南部地区埋立計画」・・・・・A 10,000ha 長崎県単独 500億円かけて地域の生産性を落とす?
 1968年 漁民300人が政府に陳情
 1969年 「計画」正式撤回

1970年   「長崎南部総合開発計画」・・・・・・B  農業+産業・住宅用
1975年 農業目的に転換される  経費見積もり→1620億円
1977-79年  佐賀県独自の調査により、長崎県の計画は有明海全体に影響すると 結論。
1979年 「公有水面埋立法」に基づいた環境アセスメント  海辺の鳥に関しては「大部分は渡来鳥で、繁殖するものは少なく、絶滅しない」
1981年 水の供給のための貯水池建設が主目的に
1982年 反対運動により、「長崎南部地域総合開発計画」凍結

1985年  「諫早湾防災干拓事業」・・・・・・・C  湾奥部を7050mの潮受堤防でしめ切り 1710haの調整池と1840haの干拓地を造成する計画
1989年 堤防の建設=河口堰
1991年 5〜9月 堤防工事用の2万立方bの砂を海底から採集 その直後 タイラギの95%が死滅 建設側は因果関係を否定  
1997年4月14日 水門閉め切り


[2] 藤前干潟
1984年 名古屋市、西1区計画具体化。 105haの埋立を発表。
1989年 上記計画では新川の治水に支障有りとして埋立を70haに変更。
1992年 初めて環境保全に配慮し、ゴミ対策との共存をはかる... として埋立を52haに縮小。
1993年12月 難航している用地買収の完了を待たずに入手した46.5haに付きアセスメントの手続きに入る。
1998年3月 市長自らが出した環境影響評価審査書の冒頭
1 事業予定区域周辺干潟域における鳥類などの生息環境及び周辺水域の 水質等干潟生態系に影響を及ぼすことは明らかである。
1998年11月8日(日)の中日新聞に名古屋市による全面広告が掲載。
 名古屋港西1区(藤前干潟)埋立事業についてご理解ください。3年後には、現在のゴミの埋立処分場は満杯になってしまいます。
 「平成13年5月頃には、どの処分場も満杯になってしまう。」
1999年12月 環境庁が厳しい意見→計画中止へ

[3] 博多湾人工島計画
1978年 「博多湾港湾計画改定」 人工島計画は背後海域の水質悪化などを招くとして陸続きの埋立方式に変更。
1988年 社団法人日本港湾協会が福岡市長の諮問を受け 「博多湾長期整備計画検討報告書」を提出。
  博多湾東部の人工島構想を打ち出す。
 12月 福岡市、ダイエーのツインドーム計画を受け入れることを決定。
1991年 福岡市、今年度中に人工島の 環境アセスを実施、来年度にも着工の方針を明らかにする。
 総事業費は約2500億円と発表。
1992年 署名の会が、12万名の署名を衆・参議長に提出し、環境庁に陳情
 9月 環境庁、全国干潟調査の結果を発表。前回(1978年)調査以降、全国で
     4000haの干潟が消失。
 11月 福岡市、環境影響評価準備書の縦覧開始
1993年4月 環境影響評価書の縦覧開始
 6月30日  福岡市議会において公有水面埋立法に基づく埋立同意議案可決。
1993年9月  運輸大臣より環境庁長官へ公有水面埋立法に基づく意見照会
1994年4月 環境庁長官の運輸大臣に対する意見の発表
        運輸大臣、公有水面埋立の認可
   7月 人工島着工

[4] 谷津干潟・三番瀬
(1)谷津干潟(千葉県習志野市)
1974年、谷津干潟は巨大なゴミ捨て場同然だった。45haのうち中央を除いた大部分がありとあらゆるゴミで埋まっていた。
  干潟の所有者の大蔵省と、千葉県、市の三者は所有者の変更や 埋立の計画を進めていた。

★地元育ちの新聞配達員、 森田三郎(当時29歳)
  17年をこす谷津干潟ゴミ拾いをスタート
  6年目にして近くの主婦達が協力開始
  1989年 第23回吉川英治文化賞受賞

(2) 三番瀬
 船橋・行徳沖 広さは1200ha
 船橋市・行徳・南行徳の3漁業協同組合
 アサリ、バカガイ、イシガレイ、アサクサノリなどの漁場

 千葉県 埋立による開発計画
 東側 港湾造成(京葉二期計画)
 西側 都市開発(市川二期計画)


※干潟を利用するシギ、チドリの大規模渡来地(1万羽以上紀録)は:
  東京湾・・・・・・谷津干潟・三番瀬
  伊勢湾・三河湾・・・・・藤前干潟・汐川干潟
  有明海・・・・・・諫早湾
  の3ヶ所のみ。



            
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