ラムサール条約条文
特に水鳥の生息地としての国際的に重要な湿地に関する条約
※[簡易版] 外務省訳に少し手を加えてわかりやすく(?)してみました
例) 適正な利用→ワイズユース
締約国は、
人間とその環境とが相互に依存していることを認識し、
水の循環を調整し、湿地及び湿地特有の動植物、特に水鳥の生息地としての、
湿地の基本的な生態学的機能を考慮し、
湿地が経済上、文化上、科学上及びレクリエーション上大きな価値を有する資源であり、
湿地を喪失することが取返しのつかないことであることを確信し、
湿地の浸食の進行及び湿地の喪失を現在及び将来とも阻止することを希望し、
水鳥が、季節的移動に当たって国境を越えることがあることから、国際的な資源として考
慮されるべきものであることを認識し、
湿地及びその動植物の保全が将来に対する見通しを有する国内政策と、調整の図られた国
際的行勤とを結び付けることにより確保されるべきものであることを確信して、
次のとおり協定した。
第1条 [湿地の定義]
条約の適用上、湿地とは、自然のものであるか人工のものであるか、永続的なもの
であるか一時的なものであるかを問わず、さらには水が滞っているか流れているか、淡水であ
るか汽水であるか鹹水(塩水)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時に
おける水深が6メートルを越えない海域を含む。
2 この条約の適用上、水鳥とは、生態学上湿地に依存している鳥類をいう。
第2条 [登録湿地]
l 各締約国は、その領域内の適切な湿地を指定するものとし、指定された湿地は、「国際的
に重要な湿地に係るリスト」(以下「リスト」といい、第8条の規定により設けられる事務局
が保管する。)に掲げられる。湿地の区域は、これを正確に記述し、かつ、地図上に表示する
ものとし、また、特に水鳥の生息地として重要である場合には、水辺及び沿岸の地帯であっ
て湿地に隣接するもの並びに島、低潮時における水深が6メートルを越える海域であって
湿地に囲まれているものを含めることができる。
2 湿地は、その生態学上、植物学上、動物学上、湖沼学上又は水文学上の国際的重要性に
従って、リストに掲げるため選定されるべきである。特に、水鳥にとっていずれの季節にお
いても国際的に重要な湿地は、掲げられるべきである。
3 リストに湿地を掲げることは、その湿地の存する締約国の排他的主権を害するものでは
ない。
4 各締約国は、第9条の規定によりこの条約に署名し又は批准書若しくは加入書を寄託す
る際に、リストに掲げるため少なくとも一つの湿地を指定する。
5 いずれの締約国も、その領域内の湿地をリストに追加し、既にリストに掲げられている
湿地の区域を拡大したり、リストに掲げられている湿地の区域を緊急な国家的利益のため
に廃止し若しくは縮小する権利を有するものとし、当該変更につき、できる限り早期に、第
8条に規定する条約事務局に通報する。
6 各締約国は、その領域内の湿地につき、リストへの登録のため指定する場合及びリスト
の登録を変更する権利を行使する場合には、渡りをする水鳥の保護、管理及びワイズユースに
ついての国際的責任を考慮する。
第3条 [ワイズユース]
l 締約国は、リストに掲げられている湿地の保全を促進し及びその領域内の湿地をできる
限り賢明に利用する(ワイズユース)ことを促進するため、計画を作成し、実施する。
2 各締約国は、その領域内にあり、かつ、リストに掲げられている湿地の生態学的特徴が
技術の発達、汚染、他の人為的干渉の結果、既に変化しており、変化しつつあり又は変化
するおそれがある場合には、これらの変化に関する情報をできる限り早期に入手することが
できるような措置をとる。これらの変化に関する情報は、遅滞なく、第8条に規定する事務
局に通報する。
第4条 [湿地保護区]
l 各締約国は、湿地がリストに掲げられているかどうかにかかわらず、湿地に自然保護区を設ける
ことにより湿地及び水鳥の保全を促進し、かつ、その自然保護区の監視を十分に行う。
2 締約国は、リストに掲げられている湿地の区域を緊急な国家的利益のために廃止し又は
縮小する場合には、できる限り湿地資源の喪失を補うべきであり、特に、同一又は他の地
域において水鳥の従前の生息地に相当する生息地を維持するために、新たな自然保護区を創
設すべきである。
3 締約国は、湿地とその動植物に関する研究並びに湿地とその動植物に関する資料及
び刊行物の交換を奨励する。
4 締約国は、湿地の管理により、適切な湿地における水鳥の数を増加させるよう努める。
5 締約国は、湿地の研究、管理及び監視について能力を有する者の訓練を促進する。
第5条 [国際協力]
締約国は、特に二以上の締約国の領域に湿地がわたっている場合、二以上の締約国に水
系が及んでいる場合には、この条約に基づく義務の履行につき、相互に協議する。また、締
約国は、湿地とその動植物の保全に関する現在と将来の施策や規制について調整しこれを支援するよう努める。
第6条(1987年:改正) [締約国会議]
l この条約の実施について検討し、この条約の実施を促進するため、締約国会議を設置
する。第8条1の事務局は、締約国会議が別段の決定を行わない限り3年を超えない間隔で
締約国会議の通常会合を招集し、また、締約国の少なくとも三分の一が書面により要請する
場合には特別会合を招集する。締約国会議の通常会合は、次回の通常会合の時期及び場所を
決定する。
2 締約国会議は、次のことを行う権限を有する。
(a) この条約の実施について討議する。
(b) リストに係る追加及び変更について討議する。
(c) リストに掲げられている湿地の生態学的特徴の変化に関する情報であって第3条2の
規定により通報されるものについて検討する。
(d)締約国に対し、湿地とその動植物の保全、管理、ワイズユースに関して一般的又は
個別的勧告を行う。
(e) 湿地に関係のある事項であって本来国際的性格を有するものについての報告や統計
を作成するよう関係国際機関に要請する。
(f) この条約の実施を促進するため、その他の勧告又は決議を採択する。
3 締約国は、湿地の管理につきそれぞれの段階において責任を有する者が湿地とその動植物の保全、
管理、ワイズユースに関するlの会議の勧告について通知を受けて、これらの者が当該勧告を考慮に入れることを確保する。
4 締約国会議は、会合ごとに「手続き規則」を採択する。
5 締約国会議は、この条約の財政規則を定め及び定期的に検討する。締約国会議は、通常
会合ごとに、出席しかつ投票する締約国の三分の二以上の多数による議決で、次期の財政期
間についての予算を採択する。
6 締約国は、締約国会議の通常会合において出席しかつ投票する締約国が全会一致の議決
で採択する分担率に従って、予算に係る分担金を支払う。
第7条(1987年:改正) [政府代表団]
l 前条lの会議に出席する締約国の代表には、科学、行政その他の適当と認められる分野
において得られた知識と経験により湿地や水鳥の専門家とされる者を含めるべきである。
2 会議に代表を出席させる各締約国は、一票を有するものとし、勧告、決議、決定は、
この条約に別段の定めがある場合を除き、出席しかつ投票する締約国の単純過半数によ
る議決で採択する。
第8条 [条約事務局]
l 国際自然保護連合(IUCN)は、他の機関又は政府がすべての締約国の三
分の二以上の多数による議決で指定される時まで、この条約に規定する事務局の任務を行う。
2 事務局は、特に、次の任務を行う。
(a) 第6条lの会議が招集されかつ組織されるに当たって助力する。
(b) 国際的に重要な湿地に係るリストを保管し、リストに掲げられている湿地に
閲する追加、拡大、廃止、縮小につき第2条5の規定により締約国が行う通報を受け
ること。
(c) リストに掲げられている湿地の生態学的特徴の変化に関し第3条2の規定により締約
国が行う通報を受ける。
(d) リストの変更又はリストに掲げられている湿地の特徴の変化をすべての締約国に通知
し、次回会議においてこれらの事項が討議されるように取り計らう。
(e) リストの変更又はリストに掲げられている湿地の特徴の変化に関する勧告を関係締約
国に周知させる。
第9条 [加盟]
l この条約は、署名のため無期限に開放しておく。
2 国際連合、いずれかの専門機関若しくは国際原子力機関の加盟国又は国際司法裁判所規
程の当事国は、次のいずれかの方法により、この条約の締約国となることができる。
(a)批准につき留保を付さないで署名すること。
(b) 批准を条件として署名した後、批准すること。
(c) 加入すること.
3 批准又は加入は、批准書又は加入書をユネスコ(以下「寄託者」
という。)に寄託することによって行う。
第10条 [発効]
l この条約は、第2条の規定に基づいて七の国がこの条約の締約国となった後四箇月で効
力を生ずる。
2 その後は、この条約は、批准につき留保を付きないで署名した国又は批准書若しくはは加
入書を寄託した日の後四箇月で各締約国について効力を生ずる。
第10条の2(1982年:改正) [改正]
l この条約は、条約の改正のためにこの条の規定に従い招集される締約国の会合において
改正することができる。
2 いずれの締約国も、改正を提案することができる。
3 改正案及び改正の理由は、この条約に規定する条約事務局に通報するものとし、事務局は、
速やかにこれらをすべての締約国に通報する。締約国は、改正案についての意見を、事務局が
改正案を締約国に通報した日から三箇月以内に事務局に通報する。事務局は、意見を提出する
期限の末日の後直ちに、その日までに提出されたすべての意見を締約国に通報する。
4 事務局は、締約国の三分の一以上が書面による要請をした場合には、3の規定に従って
通報された改正案を検討するための締約国の会合を招集する。事務局は、会合の時期及び場
所について締約国と協議する。
5 改正は、出席しかつ投票する締約国の三分の二以上の多数による議決で採択する。
6 採択された改正は、締約国の三分の二が改正の受諾書を寄託者に寄託した日の後四番目
の月の初日に、改正を受諾した締約国について効力を生ずる。締約国の三分の二が改正の受
諾書を寄託した日の後に改正の受諾書を寄託する締約国については、改正は、当該受諾書が
寄託された日の後四番目の月の初日に効力を生ずる。
第11条 [効力]
l この条約は、無期限に効力を有する。
2 いずれの締約国も.この条約が自国について効力を生じた日から五年の期間が満了した
後は、寄託者に書面による通告を行うことにより、この条約を廃棄することができる。廃棄
は、寄託者がその通告を受領した日の後四箇月で効力を生ずる。
第12条 [寄託者]
l 寄詑者は、この条約のすべての署名国及び加入国に対し、できる限り速やかに次の事項
を通達する。
(a) この条約の署名
(b) この条約の批准書の寄託
(c) この条約の加入書の寄託
(d) この条約の効力発生の日
(e) この条約の廃棄の通告
2 寄託者は、この条約が効力を生じたときは、国際連合憲章第百二条の規定により、この
条約を国際連合事務区に登録する。
以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。
1971年2月211にラムサールで、英語、フランス語、ドイツ語及びロシア語により原本一
通を作成した。これらは、すべてひとしく正文とする。原本は、寄託者に寄託するものとし、
寄託者は、その真正な謄本をすべての締約国に送付する。
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(注) 第6条投び第7条については、カナダのレジャイナで開催された第3回締約国会議において、
改正が採択され、1994年5月l日から改正後の条文が正式に発効した。